業者にシロアリの駆除を依頼する前に自分でできることをしたい…と思われている方向けに、
シロアリ駆除を自分で行う方法と手順、注意点についてご紹介します。
シロアリ駆除を始めるにあたって最初にすることは被害状況の確認です。どこからシロアリが発生しているか、床下に潜って目視点検を行いましょう。室内をくまなく点検して、床がギシギシと音鳴りしたり、柱や壁を打診したときに空洞音がするなら、シロアリ被害にあっている可能性が高いです。
床下に潜っての目視確認はとても重要です。床下にはシロアリの活動形跡が見つかる場合もありますが、シロアリは壁や土の中に巣を作る習性があるため、蟻道や巣そのものが見つけられない場合もあります。蟻道がある場合は、床下基礎や束柱などの周辺に集中していることが多いです。
その他、屋根の雨漏りや水道管からの水漏れがシロアリの被害と原因となる場合もあるので、気になる箇所は家中チェックしてまわりましょう。侵入の形跡がある場所は、メモしておきましょう。
シロアリの種類によって駆除の方法や使用する薬剤が違ってきます。ホームセンターなどで駆除剤を購入する前に、床下に潜って発生しているシロアリの種類を特定しておきましょう。日本でのシロアリ被害は主に「ヤマトシロアリ」と「イエシロアリ」と「アメリカカンザイシロアリ」の3種類です。(その他カンモンシロアリなどの派生種も存在します)
シロアリの見分け方について「発生時期や時間帯で判断する」の記事で詳しく解説しています。
シロアリを自分で駆除する時にやってしまう最大の過ちが市販のスプレー式殺虫剤での駆除です。市販の殺虫剤にはシロアリが嫌って近づかない忌避成分が入っているため、警戒心の強いシロアリは建物の奥深くに逃げこんでしまいます。殺虫剤で殺しきれなかったシロアリは、逃げた先で新たに巣を作ったりするので、被害がされに拡大してしまうおそれがあります。
シロアリ駆除に使われる業務用の薬剤は非忌避性で、シロアリが警戒することなく、巣ごと駆除できるように作られた薬剤です。目の前にいる虫だけを殺す市販の殺虫スプレーとは目的が異なります。そのため殺虫スプレーは使用しないようにしましょう。また同様にバルサンなども使用を控えてください。
シロアリが出た時の応急処置については「羽アリが出ているときの応急処置と注意点」の記事で詳しく解説しています。
暗くて狭い床下での駆除作業は、薬剤を扱いこんだり怪我をするリスクがあります。そのため、シロアリ駆除に必要な薬剤や道具だけでなく、体を保護するグッズも準備しておきましょう。
駆除に必要な道具
・シロアリ駆除剤(土壌用・木部用)
・希釈水
・シロアリ専用噴霧器
・穿孔用電動ドリル
・穴埋め用の木栓やパテ
・養生シート
・ガムテープ
・ゴミ袋
・タオル
体を保護するグッズ
・ゴーグル
・つなぎの作業服(厚手の長袖・長ズボン)
・マスク
・ヘッドライトや懐中電灯
・携帯電話
暗くて狭い床下の作業になるので、体調を崩したり身動きが取れなくなる事故も起きています。安全面の配慮から作業はひとりで進めず、必ず複数人で交代しながら行ってください。床下に入る時には携帯電話を準備しておいて万が一の事態に備えましょう。
薬剤を噴霧器を使って吹き付ける散布消毒のことを「バリア工法」と呼びます。壁薬剤を床下や建物基礎、木材に直接散布する駆除方法です。ベイト工法とは異なり即効性・持続性に優れています。シロアリの侵入経路(床下から伸びた蟻道など)に散布するので予防効果も期待できます。
床下がある建物では主流の工法ですが、床下のない店舗や全館空調になっている建物の場合は、後ほどご紹介するベイト工法が適していることがあります。
穿孔消毒で開けた穴は木栓やパテで塞いでください。シロアリの被害は風呂場・洗面所・トイレ・キッチンなどの水回りや玄関付近が多い傾向にあります。また水漏れ箇所や基礎コンクリートのひび割れ箇所周辺はシロアリが集まる箇所なので重点的に薬剤処理するようにしてください。
バリア工法で駆除を検討している方むけに、特徴をまとめました。
メリット | ・シロアリ駆除の効果が出るのが早い(即効性) ・半日程度で施工が終わる ・ベイト工法に比べて費用が安い ・5年間の予防効果がある ・シロアリ被害を見ながら正確に駆除できる |
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デメリット | ・薬剤を大量に撒くので養生が必要 ・蟻道や蟻害を見極める経験が必要 ・薬剤の散布ムラがあると駆除効果が落ちる ・床下高が低い場合は施行できない |
シロアリの8割は家の下の土壌から侵入してくるので、地面は布基礎・ベタ基礎ともに土壌消毒が必要になります。(残り2割の侵入は羽アリによる飛来です)束石や基礎周辺には念入りに散布しておいてください。
なお、近年の薬剤は安全性が高いものが多い、経験のない方が散布するには取り扱いに注意が必要ため、化学物質過敏症などの不安がある方は次のベイト工法での駆除をおすすめします。
シロアリを死滅させるベイト剤が入った器具を、建物周辺を囲むように設置するのが「ベイト工法」です。ベイト剤にはシロアリが脱皮できなくなって死滅する作用があり、脱皮をしない哺乳類には影響がありません。そのためお子様やペットが居る場所でも安心して使用できます。
ベイト工法は土に穴を掘って、ベイト剤の入ったステーションと呼ばれる器具を埋めるだけなので、使い方も簡単です。床下がない建物のシロアリも駆除することができます。デメリットとしては即効性がないことです。シロアリに巣までベイト剤を持ち帰ってもらうまで待つ必要があるので、ステーションを何度も交換して数ヶ月かけて駆除する手間がかかります。
ベイト剤とステーション(容器)は別々になっているので、説明書をよく読んでセッティングしてください。設置準備ができたら、建物の基礎から30cmほど離れた場所に、穴を掘ってステーションを埋めこみます。木部に設置する場合は粘着テープなどで固定して設置します
設置してから数ヶ月は、根気強くステーション内のシロアリを観察します。もし設置から半年近くシロアリが確認できない場合は、設置場所が良くない可能性がありますので、設置場所を変更してください。またシロアリの巣は複数存在する場合が多いです。一箇所で駆除が終わった後も、その他のステーションは回収せずに駆除の様子を観察し続けてください。
ベイト工法で駆除を検討している方むけに、特徴をまとめました。
メリット | ・シロアリを巣ごと駆除できる ・少量の薬剤で駆除するため人や環境にやさしい ・建物に穴をあけずに駆除できる ・建物の構造にかかわらずどんな物件でも施工可能 |
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デメリット | ・費用が割高になる ・駆除にかかる期間が長い(最低2~3ヶ月) ・コンクリート面の設置には掘削機が必要 ・寒い時期は駆除に適さない |
ベイト工法でシロアリを駆除するには、最低でも2~3ヶ月かかります。何度も薬剤を入れ替えたりするので、散布消毒とくらべて費用が割高になります。また、ベイト工法によってシロアリを巣ごと完全に駆除した後でも、シロアリ予防の効果は無いために散布消毒が必要になる場合があります。
薬剤をくまなく散布しても、表面だけでは地中や柱の中にある巣を完全に駆除できない場合があります。その時は被害箇所を中心に4mm程度の穴を空けて、薬剤を加圧注入する穿孔消毒を行ってください。この時に木部にドリルで穴を開けるため、家屋を必要以上に傷つけないように注意しましょう。木栓やパテで後処理することで、ある程度は美観を保つことができます。
また、薬剤の散布時には肺に吸い込んで体調が悪くなるので、換気をしながら作業してください。薬剤が室内に飛び散らないよう、床下点検口付近はビニールシートで養生しましょう。
シロアリを巣ごと完全に駆除できたら、更なる被害を防ぐためにも、予防対策を行ってください。
・床下の湿気対策を行う(カビの除去・換気)
・建物の敷地内に木材を放置しない
・建物の修繕をする(水漏れや亀裂を放置しない)
湿気対策はカビ除去や床下の換気が主となります。庭の切り株はシロアリのエサになるので放置せず、抜根するのが望ましいです。また、シロアリは水回りや小さな亀裂から室内に侵入してきます。経年劣化によって傷んだ屋根や外壁の修繕やコンクリートのクラック(小さな亀裂)のパテ埋めなどお手入れを行ってください。
そのような予防対策を行った上で、5年に1度は定期的に、ベイト工法やバリア工法でシロアリの薬剤処理を行えば完璧です。
今回は、シロアリを自分で駆除する方法や注意点についてご紹介しました。シロアリの駆除を業者に頼むと、どうしても費用がかさんでしまいまうため、自分で駆除をして費用を節約できるのがメリットです。デメリットとしては、薬剤や道具を一から自分で準備したり、狭くて暗い床下で害虫にまみれながら何十リットルもの薬剤を撒く作業の手間です。
また、シロアリの巣は土壌や柱の中にあって目視確認はしずらいため、資格や経験がない方が巣ごと完全に駆除するのは大変困難です。自分で駆除しても巣を駆除しなければシロアリが再発してしまい、結果的に業者に依頼するケースも多々あります。できれば専門業者にきちんと検査してもらい、概算の見積だけでも依頼することをおすすめします。
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1968年愛知生まれ。一部上場マンション・ハウスメーカーからの転身者という経歴を活かし、「住宅設備を知り尽くした害虫駆除マスター」として大手家電量販店のリフォームセンター業務に従事。シロアリ駆除から水回りの湿気対策まで、床下に特化した工事を多数手がける。