「シロアリの薬って、子どもやペットのいる家で使って本当に大丈夫なの?」
ホームセンターの棚の前で、あるいは業者から届いた見積書を見ながら、そう感じた方も多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えすると、安全かどうかを分けるのは薬剤の名前よりも「何を、どれだけ、どこに使うか」です。薬剤は形状で大きく4種類。市販品と専門業者が使う薬剤とでは、薬が届く範囲がまるで違います。このページでは、商品パッケージや見積書を見たときにご自身で判断できるよう、種類・成分・市販品との違い・ご家族に合わせた注意点を順番に整理していきます。
シロアリ駆除剤は大きく4種類
ひとくちに「シロアリの薬」と言っても、目の前のシロアリに吹きかけるものから、巣に持ち帰らせて群れごと退治するものまで、働き方はさまざまです。まずは全体像をつかんでおきましょう。
| 種類 | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| スプレー(エアゾール) | 目に見えているシロアリに直接噴射する即効タイプ。巣全体には届きにくい | 応急処置・部分的な対応 |
| 液剤(散布・注入) | 床下や木部に散布・注入するバリア工法で使用。施工範囲が広い | 予防・駆除工事全般(業務用が中心) |
| 粒剤 | 土壌に混ぜ込んで使用。持続性がある | 予防的な土壌処理 |
| ベイト剤 | 毒餌をシロアリに巣まで持ち帰らせて駆除する。即効性はないが巣ごと駆除しやすい | お子さま・ペットがいるご家庭、床下がない建物 |
ここで押さえておきたいのは、シロアリの本体は目に見えている数匹ではなく、床下や土の中にある巣のほうだということ。スプレーで見えている分を退治できても、巣が残っていれば被害は続きます。むしろ忌避成分が入ったスプレーは、シロアリが刺激を避けて別の場所へ逃げ込み、被害範囲を広げてしまうこともあります。どのタイプを選ぶかは、「見えている虫を減らしたいのか、巣ごとなくしたいのか」で変わってきます。
見積書のカタカナは何のこと?有効成分の5分類
見積書や商品の裏面に「イミダクロプリド」「ビフェントリン」といったカタカナが並んでいて、読むのをあきらめた経験はありませんか。名前は難しそうですが、実はどれも次の5つのグループのどれかに入ります。グループさえ分かれば、「これはどういう働きの薬か」がぐっとつかみやすくなります。
ネオニコチノイド系
代表的な成分はイミダクロプリドやクロチアニジン。昆虫の神経に作用するタイプで、少ない量でも効くように設計されています。
合成ピレスロイド系
ビフェントリンやペルメトリンがこのグループです。蚊取り線香でおなじみの除虫菊の成分をもとに、化学的に合成して作られています。効き目の速さが持ち味です。
フェニルピラゾール系
代表はフィプロニル。シロアリは仲間同士で体をなめ合ったり、エサを口移しで分け合ったりする習性があり、その習性を利用して薬剤を群れに広げる工法にも使われています。
ホウ素系
ホウ酸塩が主成分の薬剤です。揮発しにくく空気中に成分が広がりにくいのが特徴で、木材そのものに防蟻処理をするときなどに使われます。
IGR剤(脱皮阻害剤)
主にベイト工法で使われる成分です。シロアリは脱皮を繰り返して成長しますが、IGR剤はその脱皮を止めて駆除します。脱皮をしない人やペット(哺乳類)への影響は小さいと考えられています。
成分の詳しいデータは、各薬剤メーカーが公開している「SDS(安全データシート)」で確認できます。見積もりのときに「どの薬剤を使いますか?」と聞くのは、まったく失礼なことではありません。気になる点は遠慮なく質問してみてください。
市販品と業者が使う薬剤、何が違う?
「ホームセンターで買える薬で済むなら、それに越したことはない」。そう考えるのは自然なことです。ただ、市販品と業務用とでは、薬の強さ以上に「どこまで届くか」「その後の面倒を誰が見るか」に大きな差があります。
| 市販品 | 業務用(専門業者) | |
|---|---|---|
| 購入・使用 | 誰でも購入・使用可能 | 登録業者のみ取り扱い可能な製品もある |
| 施工範囲 | 目視できる範囲・部分的な処理が中心 | 床下全体・侵入経路を特定した上での処理 |
| 効果の持続性 | 製品によって差がある | 5年保証など、持続性を前提とした施工が多い |
| 保証・補償 | 基本的になし | 再消毒保証・損害補償が付帯する場合がある |
たとえば、玄関の柱でシロアリを見つけたとします。市販品で対処できるのは、手の届く柱のまわりまで。でも、シロアリがどこから入ってきたのか、床下のどこまで広がっているのかは、床下にもぐって調べないと分かりません。専門業者の施工は、この「見えない部分」を調べて、そこまで薬を届けるところに意味があります。
薬剤の安全性、どう考えればいい?
風邪薬も、決められた量を守れば頼もしい味方ですが、一度にたくさん飲めば体に害になります。シロアリの薬もこれと同じで、「この薬剤なら絶対に安全」「この薬剤は危険」と名前だけで決まるものではありません。大事なのは、決められた量を、決められた場所に、正しく使うことです。
かつては、防蟻剤に使われていたクロルピリホスという成分がシックハウス症候群の原因物質のひとつとして問題になり、2003年の建築基準法改正で、居室のある建物への使用が禁止されました。いま住まいに使う薬剤を選ぶときに、シックハウスの原因物質を含まないかどうかが大事なチェックポイントになっているのは、こうした経緯があるからです。
リムケアでは、認定薬剤のうち、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドなど13物質に該当しない普通物の薬剤を使っています。臭いもほとんどなく、防除施工標準仕様書で定められた安全規定量を守って施工しています。
そのうえで、ご家族の状況に合わせて次の点も確認しておくと、より安心です。
妊娠中の方がいるご家庭
施工中と施工直後は、薬剤をまいた場所から離れて過ごすのがおすすめです。施工日に合わせて外出の予定を入れておくと安心です。臭いや刺激が気になる場合は、低臭・低刺激の薬剤を使えるか、事前に業者へ相談してください。体調面で心配なことがあれば、かかりつけの医師にも相談しておきましょう。
ペットがいるご家庭
薬剤の種類によっては、魚や爬虫類など特定の生き物に強く影響するものもあります。水槽や飼育ケースがある場合は、見積もりの段階で業者に伝えておきましょう。施工中は施工場所からペットを離し、施工後は案内された時間どおりに換気するのが基本です。
小さなお子さまがいるご家庭
ハイハイをしたり、何でも口に入れたりする時期の子どもは、大人よりも床や物に触れる機会がずっと多くなります。施工中と施工直後はその部屋に入らないようにし、薬剤が乾いて換気が終わったことを確かめてから部屋に戻りましょう。
自分で対処できる範囲、プロに任せたい範囲
市販の薬剤で対応できるのは、見つけたシロアリへのその場の対処までです。巣を突き止めて根本から駆除するには、床下にもぐって被害の範囲や侵入経路を調べ、そのうえで適切な薬剤と工法を選ぶ必要があります。ここは専門業者に任せたほうが確実です。
自分で対処する場合の手順や、やってしまいがちな失敗は「シロアリ駆除を自分でやると失敗する?正しい方法と注意点をプロが解説」で詳しく紹介しています。業者に頼む場合の費用感は「シロアリ駆除費用の相場」、信頼できる業者の見分け方は「シロアリ業者の選び方|危ない業者を見抜く10のポイント」を参考にしてください。
よくある質問
- 市販のシロアリ駆除剤だけで完全に駆除できますか?
- 目に見えているシロアリへの応急処置はできますが、巣全体を駆除するには床下や壁の中など見えない範囲まで対応する必要があります。市販品だけで根本から駆除するのは難しいと考えてください。
- ベイト剤は子どもやペットがいても使えますか?
- ベイト剤に使われるIGR剤(脱皮阻害剤)は、脱皮をしない人やペット(哺乳類)への影響が小さいと考えられており、小さなお子さまやペットのいるご家庭で選ばれることが多い工法です。ただし、製品ごとの注意事項は必ず確認してください。
- 薬剤をまいたあと、どれくらいで家に戻れますか?
- 薬剤の種類や施工範囲によって変わります。業者から案内される換気時間や、部屋に入ってよい時間に従ってください。
- 使う薬剤の安全性データはどこで確認できますか?
- 薬剤メーカーが公開しているSDS(安全データシート)で、成分や毒性の区分を確認できます。見積もりのときに、どの薬剤を使うのか業者に聞いておくのもおすすめです。
まとめ
- シロアリ駆除剤は、スプレー・液剤・粒剤・ベイト剤の4種類
- 市販品は目の前のシロアリへの応急処置向き、業務用は床下全体など見えない範囲の処理向き
- 安全性は薬剤の名前より、決められた量と使い方を守っているかどうかで決まる
- 妊娠中の方・ペット・小さなお子さまがいるご家庭は、施工前に業者へ伝えて配慮してもらう
「うちの場合、どの薬剤が合うんだろう?」と迷ったら、現地調査やお見積りのときに遠慮なく聞いてください。床下の状態とご家族の状況をうかがったうえで、使う薬剤と施工方法をご説明します。











